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カリフォルニアワインの未来、ドメーヌ・ド・ラ・コートのピノ・ノワール

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 私はカリフォルニアワインの未来を見た。その名はラジャ・パー。


 ロック好きには余りに有名な、評論家ジョン・ランドーが1974年に残した名文句をなぞるとそうなる。やや大げさだが。

 

 ちなみに、その文句とは「私はロックン・ロールの未来を見た。その名はブルース・スプリングスティーン」。ランドーはその後にブルースのマネジャーとなり、名作「明日なき暴走」をプロデュースすることになる。


 ラジャがサッシ・ムーアマンと組んだサンディのすごさは知っていた。今回、ノックアウトされたのはドメーヌ・ド・ラ・コートのピノ・ノワールだった。サンタ・リタ・ヒルズの冷涼なブルームス・フィールドの畑から生まれる。ダイアトム、砕けた火山性など多様な土壌から、驚くようなピノ・ノワールが生まれる。



 オレンジの皮の香りがするカリフォルニアのピノ・ノワールは初めてだ。ルロワやDRCをほうふつとさせる。全房発酵100%に由来するスターアニスの香りと引き締まったボディ。スパイシーな風味があるが、そこはカリフォルニア。青い感じはない。適切な熟成のブドウを全房発酵するとこうなるという見本だ。ブルゴーニュで言えば、日照に恵まれた優良なヴィンテージを全房で発酵させるのと同じ感触。

 


 完熟感があるが、それほどタイトニットではない。ミネラル感はあるのだが、ツヤツヤした果実の丸さを感じさせる。10日にわたる旅の最終日で、最も完成度の高い、バランスのとれたピノ・ノワールに出会った。アルコール度は13・5%。酸がしっかりとあり、アルコリックな感じはない。


 日系のサッシはかつてビッグワインを造っていたが、ラジャと出会ってから、現在のようなスタイルに変わったのだという。インド出身のラジャは謙虚で、聖人のようなオーラをたたえている。どの生産者に会っても、「ラジャに会うのか。よろしくいっといて」と言われるのは、人徳があるからだろう。

 

 だから、ブルゴーニュ品種でバランスあるワイン造りを目指すIPOBの会長にも適任だ。いろいろな相談も受けているという。バランスのとれた「新カリフォルニアワイン」を推進するような新しい動きには、彼のようなリーダーが必要だ。


 ラジャは元々、ヨーロッパ的な舌の持ち主だった。ラヴノーのシャブリ・レ・クロという白ワインの最高峰にひかれて、ワインの道に入ったという。有名レストラン・チェーン「マイケル・ミーナ」のワインディレクターを務めたことも、世界に開かれたパレットを磨くのに役立ったという。


 現在はワインディレクターを辞めて、ワインメーカー専業。カスタムクラッシュで汗をかく姿が似合う。オレゴンとカリフォルニアのワイナリーを忙しく、飛び回っている。名声も年収も恵まれたソムリエからの転身に後悔はなかったという。「だって、ワイン造りの方が面白いだろう」。


 ラジャとサッシのコンビは黄金だ。


 カリフォルニアのピノのベンチマークを極めたかったら、まずドメーヌ・ド・ラ・コートを飲まねばならない。

(2014年9月11日 カリフォルニア・ロンポックで)
ドメーヌ・ド・ラ・コート ピノ・ノワール ブルームス・フィールド 2012
年に一度は飲みたい度:95点 
日本での価格は9000円
輸入元:中川ワイン

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