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ジャック・セロスの最高峰はシュブスタンスである。十数年前にパリで購入したボトルと、評論家が100点をつけたミレジメ2008と並べて試飲して確信を深めた。
2008年は今のところ、21世紀で最高のヴィンテージだ。潜在アルコール度数は9.8%、総酸度は8.6g/L、pHは2.98。シャルドネがとりわけ成功し、生き生きした酸と高い熟度が調和している。サロンがマグナム瓶だけをリリースしたことが高い熟成力を証明している。
「ジャック・セロス エクストラ・ブリュット ミレジメ 2008」(Jacques Selosse Extra-Brut Millesime 2008)はシードルを思わせるゴールデンイエロー、芳醇で焼きリンゴ、レモンオイル、ベルガモット、砕いたチョーク、うまみと塩気を帯びたエキスが凝縮している。2008らしい鮮やかな酸味。重厚だが重さはなく、ミネラル感を帯びたテクスチャー。時間とともにスケールが広がる。ち密な緊張感が果てしない余韻に続く。2007年からヴィンテージはギョーム・セロスが造っている。シャルドネ80%、ピノ・ノワール20%。デゴルジュマンは2020年1月。生産量は4000本。98点。
デゴルジュマンから5年ではまだ赤子のような状態。さらに10年は寝かせたい。そのころには地上から消滅しているだろうが。日本でのリリースはコロナ禍と重なり、価格も控えめだったという。貴重なボトルをシェアしてくれたシャンパーニュ・コレクターに感謝である。
続いてパリで購入した私のボトルを開けた。
「ジャック・セロス シュブスタンス ブリュット」 (Jacques Selosse Substance Brut)はデゴルジュマンが2011年7月。飲み頃ど真ん中。ミレジメ2008よりもさらに深い色調のゴールデンイエロー、酸化的なニュアンスがやや強いが、はつらとした酸とほろ苦みを帯びたフレッシュ感が背骨を貫いている。ドライマンゴ、ローストしたヘーゼルナッツ、ブリオッシュ、甘美な果実味、ニュアンスに富むミネラル感、重層的で底の見えない深海に潜っていくようだ。エキゾチックでエネルギーが横溢している。1986年からソレラシステムで蓄積したベースワインで造られるブラン・ド・ブラン。生産量は3000本。99点。
ヴィンテージを消し去ったシュブスタンスとヴィンテージを表現するミレジメ。醸造の手法は対極にあるが、たどり着くのはセロス親子が無数の泡を背景に描き出す無限の万華鏡だ。確かなのは時間が必要なワインだということ。四半世紀にわたって飲んできた経験からそれはわかる。
合わせた料理はまたも「清壽」(築地)の天ぷら。海老、ホタテ、宍道湖の白魚……どれも素晴らしかったが、小柴漁港からあがった肉厚な穴子が濃密なセロスと抜群の相性だった。
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