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ブランドより産地をアピール、日本ワインの中で長野の占める位置…大橋健一MWのマスタークラス

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 日本ワインを世界に広めるには、ブランドより産地を理解してアピールすることが重要。シャトー・メルシャンのブランドコンサルタントを務める大橋健一MWが19日、シャトー・メルシャンのマスタークラスを行い、日本のワイン産業の課題と長野の位置づけを解説した。


 日本のトレードは産地の特色よりブランドにフォーカスしがちな傾向がある。それを示す例として挙げたのが今秋に発刊予定の「ワールド・アトラス・オブ・ワイン」の編集をめぐって、編集者のジャンシス・ロビンソンOBEと交わしたやりとりだった。日本ワインの項を執筆する大橋MWは山梨に続いて、長野の地図を追加するよう交渉したが却下された。長野の世界的な知名度が低かったからだ。


 各国にワインが広がっている中で、生産者が産地名をブランドに紐づけているのは大きな効果がある。昔のブルゴーニュを振り返ると、「ロマネ・コンティ」と「コルトン・クロ・デ・コルトン・フェヴレ」だけが、ワインに生産者名を入れるのが許され、長く高い知名度を誇っている。


 日本に同じ例があるのは、ドメーヌ・ド・モンティーユが函館で始めた「ド・モンティーユ & 北海道」だ。当主のエティエンヌは優れた造り手だが、マーケッターとして広い視野の持ち主でもある。ワインの高品質は当たり前として、名前を短期間で市場に浸透させるのは簡単ではない。

 

 彼は2023年にドイツで開かれたマスター・オブ・ワイン(MW)のシンポジウムで、世界のピノ・ノワールの比較試飲にワインを供出し、歴史の浅い日本ワインに「北海道」という産地が存在することを一気に世界に広めた。


 日本のトレードや愛好家は、ブルゴーニュのドメーヌやアペラシオンには詳しいのに、日本の産地の土壌、地勢、歴史などは掘り下げていない傾向がある。今回のマスタークラスでは、長野県の全体的な情報からワインのテロワールまで細かい情報をカバーした。


 長野はセミ・コンチネンタル(半大陸性)気候で北緯は36度。トルコ、スペインのアンダルシアと同じ。2024年の国税庁調査によると、ワイナリー数は75場で国内の493場のうち15.2%を占める。日本で2番目の産地。生産量は2645klで国内の4分の1を占める。


 シャトー・メルシャンは長野県内の椀子(上田市)と桔梗ヶ原(塩尻市)にワイナリーを所有する。「長野シャルドネ 2024」と「長野メルロー 2023」を試飲した。

 

 長野シャルドネは北信地区84%、安曇野地区16%のシャルドネで造られる。北信地区(長野県北部)は千曲川右岸と左岸に分かれる。右岸は雪が降り、標高は430mから600mと高い沖積土壌。左岸は標高330mから360mと低めの平坦な土地。ペトリュスで知られるブルー・クレイ(青い粘土)を含む沖積土壌。安曇野は標高600mと高い西向きの傾斜地。西日が当たる。3つの産地のブレンドがバランスを生んでいる。


 「シャトー・メルシャン 長野シャルドネ 2024」(Chateau Mercian Nagano Chardonnay 2024)は青リンゴ、白桃、貝殻、ほのかにヴァニラ、さわやかな酸味が柔らかい果実味と調和している。まろやかで、塩気を帯びた余韻。生産量は1万本。3020円。88点。


 長野メルローは塩尻(桔梗ヶ原と片丘)53%、椀子29%、安曇野10%、北信8%のブレンド。標高740mの桔梗ヶ原は黒ぼく土、片丘はやせた砂礫。椀子は火山性の粘土質、安曇野は褐色森林土壌。ステンレスタンクで発酵させてオークで15か月間の熟成。


 「シャトー・メルシャン 長野メルロー 2023」(Chateau Mercian Nagano Merlo 2024)はダークベリー、プラム、セージ、炭、ジューシーなタンニン、ほのかな青さが丸い果実味と統合されている。フレッシュなフィニッシュ。ヴァリュー。3620円。89点。


シャブリを連想させる北信シャルドネ


  同時に、シャトー・メルシャンが長野で造るワインをいくつか試飲した。


 「シャトー・メルシャン 北信右岸シャルドネ リヴァリス 2021」(Chateau Mercian Hokushin Right Bank Chardonnay Rivalis 2021)はほのかに還元的で、冷涼感があり生き生きしている。レモンオイル、柑橘、砕いた石、ビシッとした酸、なめらかなテクスチャー、抑制されていて、しっかりした構造がある。塩気を帯びて、ひきしまったフィニッシュ。7500円。93点。


 「シャトー・メルシャン 北信左岸シャルドネ リヴァリス 2021」(Chateau Mercian Hokushin Left Bank Chardonnay Rivalis 2021)は右岸より芳醇で丸みがある。レモンオイル、白桃、オレンジの皮、さわやかな酸と果実味のバランスがとれている。シャブリの右岸に通じる豊かな果実味があり、濡れた石とうまみがもたらすミネラル感。緊張感を伴う余韻が長い。7500円、92点。


 「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原 メルロー 2018」(Château Mercian Kikyogahara Merlot 2018)は1985年から生産されているフラッグシップ。ダークベリー、プラム、メントール、ハーバルなタッチが繊細さと複雑性をもたらしている。タンニンはなめらか、きめ細かい酸、厚みがあり、うまみを帯びたフィニッシュ。1万3270円。91点。


 「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原 メルロー シグナチャー 2020」(Château Mercian Kikyogahara Merlot Signature 2020)は区画を選んで樽も選定したキュヴェ。骨太で力強く焦点があっている。柔らかい口当たり、ブラック・ラズベリー、カシス、ゴボウの根、洗練されたタンニン、穏やかなタンニン、力強い果実味。熟成感があって腐葉土のノート。2万730円。92点。


 「シャトー・メルシャン 椀子 オムニス 2018」(Château Mercian Mariko Vinyard Omnis 2018)はカベルネ・フラン41%、メルロー34%、カベルネ・ソーヴィニヨン13%、プティ・ヴェルド12%。椀子ヴィンヤードの全体像を表現するアイコンワイン。フローラルでエレガント、程よい力強さの果実味と生き生きした酸が調和していてバランスがとれている。しなやかなタンニン、深みがあり、日本のボルドー・ブレンドのフィネスのあるべき姿がここにある。2万730円。94点。

椀子ワイナリー
桔梗ヶ原ヴィンヤード
桔梗ヶ原ヴィンヤード
片丘ヴィンヤード

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