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精妙なオー・ブリオン1995と爛熟のセロス1998、「アラジン」の季節感あふれるフレンチと

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 熟成したボルドーのグランヴァンの評価は難しい。そう思った。1990年代の1級シャトーの状態が知りたくて、「シャトー・オー・ブリオン1995」(Chateau Haut-Brion 1995)を、東京・広尾のフレンチ「アラジン」で開けた。プリムールで1万2000円で購入し、約20年間、倉庫で寝かせていたボトルだ。
 輝きと赤みを残す明るい色調は若々しい。アーシーで、黒コショー、熟れたプラム、ブラックカラント、シルキーなテクスチャーだが、線は細くタイト。細やかな酸がフレッシュ感を与え、生き生きしている。タバコ、腐葉土に混じって、煎茶のような清涼感があり、複雑さを生んでいる。フィニッシュは長く、40秒近い。メドックの肉付きの良さとは違い、メルロからくる柔らかさがあり、繊細で、優美。典型的なオー・ブリオンだ。95点。
 オー・ブリオンはヴィンテージに関係なく、安定している。ともすると軽く思われがちなエレガンスがここの持ち味である。ただ、最近の2015、2016ははるかに骨太で、タンニンの熟度も上がり、押し出しが強い。地球温暖化だけでなく、栽培と選別の精度が上がっている。現在のセカンドワインが90年代のグランヴァンに匹敵すると言われる所以だ。最新ヴィンテージと比較すると、1995はかすかに青く感じる。ミンティなその青さからくる複雑性、精妙さがボルドー本来の魅力なのだが、この1995を熟度の高い同年代のスーパータスカンやナパのトップワインとブラインドで試飲したら、オー・ブリオンの方を低く評価するだろう。「パリティスティング」が広めた新旧ワインのブラインド比較試飲で新世界がしばしば勝利するのはそういうことだ。
 最新のポルシェが最良のポルシェとはよく言われるが、それはボルドーのグランヴァンにも当てはまる。優雅な熟成感をとるか、完熟果実からくる細部まで磨き上げられたバランスを追い求めるか。どちらをとるかは好みの領域に入るが、客観的な基準に照らして点数をつけると、最近のヴィンテージの方が高くなる。逆に言うと、この20年間でボルドーは大きく進化している。そのことを思い知った。それとは別に、オー・ブリオン1995の市場価格を調べたら、プリムール価格の5倍は超している。ボルドーワインの投機的な価値も改めてわかった。
 口あけは「ジャック・セロス シャンパーニュ 1998」(Jacque Selosse Champagne 1998)だった。デゴルジュマンは2007年2月。ちょうど10年たっている。数年前に飲んだ時は若かったが、ちょうど飲みごろのセロス・フェイズに入っていた。グラスに鼻を近づけた時、ジョン・レノンの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド」が鳴った。タンジェリンの木 マーマレードの空……。マーマーレドのコンフィ、パンデピス、ブリオッシュ、アカシアのハチミツ、フレッシュな酸とチョーキーなミネラル感が骨格にありながら、層を織りなす複雑な香りはトロピカルなタッチを帯びている。超熟の1999ほどではないが、果実が熟したことを感じさせる。偉大な年のムルソー・ペリエールを連想した。テクスチャーはクリーミィ。抑制されたミネラル感とゴージャスなフルーツのコントラストが、セロスのヴィンテージの醍醐味である。クジャクの尾のように広がる香りの万華鏡から、フィニッシュは針の先端のように焦点が合ってくる。酸がほどけない1996、マグナムのみで仕込んだ硬質な1997に比べて、今が最も飲みごろなのが1998ヴィンテージだ。とはいえ、アヴィーズから6000本のみ生産。パリで120ユーロで購入できた10年前はいい時代だった。97点。
 川崎シェフの古典を下敷きにした創造力あふれる料理は、いつ食べてもハッとさせられる発見がある。旬を感じる。オー・ブリオンには、濃厚すぎない熊本の夏鹿が良く合った。セロスには、ほろ苦い肝のソースを添えた鮎が素晴らしく相乗した。
トウモロコシの冷たいスープとアイスクリーム
帆立のちりめんキャベツ包み
肝のソースを添えたアユのルーロー
夏鹿

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