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新潟ワインコースト 秀逸なアルバリーニョの産地

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 日本ワイン格付けに向けた各産地の試飲は今回、新潟県にフォーカスする。新潟は興味深い産地だ。日本ワインブドウの父と呼ばれる川上善兵衛が開いた歴史のある岩の原葡萄園がある一方で、新潟市の日本海に面した地区に1990年代以降、新たなワイナリーが続々と登場している。
 新潟市から日本海に向かった門田浜の砂丘に「新潟ワインコースト」と呼ばれる産地が広がる。ここを切り開いたのは、カーブドッチ・ワイナリーだ。ナパヴァレーのワイナリーをお手本に、ワイナリー、レストラン、ショップなどを備え、多角化経営を行っている。水はけのよい砂地土壌に、垣根仕立てで、アルバリーニョ、シュナン・ブラン、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンなど多彩な品種を栽培している。ワイナリー経営塾を開き、そこの生徒からフェルミエやドメーヌ・ショオなどのワイナリーが生まれた。
 日本でのアルバリーニョの可能性は、この地から広がったと言っていいだろう。大西洋に面したスペイン・ガリシアのリアスバイシャスの主要品種だが、果皮が厚く、年間1300-1700ミリの降水量に耐えられる。日本の気候でも成功している。生き生きした酸とミネラル感を備えるのが特色で、魚介類との相性もいい。今回の試飲でも、カーヴ・ドッチとフェルミエから多くのアルバリーニョが高得点を獲得した。
 岩の原葡萄園は上越市にある。川上善兵衛は明治時代に、固有品種のマスカット・ベーリーAを作出した。ブドウ品種の改良と醸造技術や生産設備の進歩にも功績を残した。品種交配に取り組み、赤ワイン用のマスカット・ベーリーAとブラック・クイーン、白ワイン用のローズ・シオター、レッド・ミルレンニウムなどを作出した。2014年に醸造施設を刷新するなど、品質向上に向けて努力を続けている。
 胎内市にある胎内高原ワイナリーは、急斜面でツヴァイゲルト、メルロ、シャルドネなどヨーロッパ系品種に取り組んでいる。コンクールでの入賞歴もある安定した評価の市営ワイナリーだ。有機栽培に取り組み、提供された4本のワインすべてが優良(85-89点)だった。
 今回は新潟県の9ワイナリーに呼びかけて、7ワイナリーからサンプルの提供を受けた。ワイナリーを代表する銘柄の送付をお願いして集まったのは37銘柄。3人のテイスターが7月末に試飲を行った。平均点が85点以上の15本を掲載する。フェルミエはアルバリーニョだけを送付してきたが、6銘柄すべてが優良(85-89点)以上で、傑出(90点以上)も3銘柄あった。カーヴ・ドッチもアルバリーニョの評価が安定していた。
 
 傑出ワインはこちhttps://www.winereport.jp/archive/1226/
 優良ワインはこちhttps://www.winereport.jp/archive/1227/
 
サンプル提供を受けたのは以下の7ワイナリー。

胎内高原ワイナリー

カーブドッチ・ワイナリー

フェルミエ

レスカルゴ

アグリコア越後ワイナリー

岩の原葡萄園

ルサンクワイナリー

山本昭彦
「アルバリーニョは個人的にいま最も関心を抱いている品種。スペイン・ガリシアからポルトガルにかけてが主要産地だが、きれいな酸とミネラル感があり、日本の食卓でも活躍する余地が大きい。日本にも良好な生産者が輸入されているが、新潟のトップワインは世界水準に達している。フェルミエのアルバリーニョは、世界的な専門家に試飲させれば驚かれるのは間違いない。冷涼で、雨量が多くても成功する品種であり、こうしたマイナーな品種の可能性を追求するのも日本ワインの一つの方向だろう。市営の胎内高原ワイナリーのビオロジックの取り組みも注目に値する。有機的な農法が広がる中でお手本となる。新潟ワインコーストは志ある造り手が集まって切磋琢磨している。マイナーな産地が世界的に評価されるようになった他国の例を思い出させる」

大橋健一MW
「意識的に新潟のワインの味を見るようになって20年以上になる。日本海側にあって、台風の直撃を大抵の場合は回避でき、栽培面では利点がある一方で、フレーバーの完熟が難しいイメージがあった。ただ、ワイナリーの努力によって最適な品種の選抜や栽培・醸造の改善があり、温暖化もあって過度なハーブやピラジンが残る印象が劇的に減っている。今回の試飲ではいくつか驚くべき発見があった。フェルミエやカーブドッチが取り組むアルバリーニョは一定以上の成果が出ている。生産コストは高いが、世界的にトレンディな品種だけに、世界の注目を集める品質のワインが登場している。胎内高原ワイナリーは、有機農法を実践して、生産量も確保できている。今後の強みになるだろう」

大越基裕
「日本では有名な国際品種を主体に栽培されてきたが、ここにきてそれが淘汰される流れも出ている。新潟では有名な品種にとらわれず、シャルドネを引き抜いてアルバリーニョに植え替えたりしてきた。それで結果がでれば、評価もついてくる時代になった。アルバリーニョはここ10年間、世界的にトレンディな品種でもある。フェルミエは初期のころから見てきたが、どんどん良くなっている。今回の試飲はそれが如実にわかった。ニュートラルな品種で、強さを強調しない料理のトレンドに合っている。魚料理なら焼いたものより、蒸しあげたものに柚子胡椒を添えると面白い。焼き鳥ならササミにシソや梅をつけるような感覚で合わせたい」

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