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冷涼な豪タスマニア 注目産地の実力を検証

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 新興の産地や生産者が次々と登場するオーストラリアの中でも、タスマニアは注目すべき産地だ。
 タスマニア島はオーストラリア南東部からバス海峡を隔てて240キロの沖合いに浮かぶ。北海道より少し小さい程度の大きさで、オーストラリア最南端の産地。南緯41.5度はニュージーランドのマールボロとほぼ同じ。南に広がる南極海からの風を受ける冷涼な気候で、シャルドネやピノ・ノワール、リースリングに適している。スパークリングワイン向けのベースワインに使うブドウの重要な供給地となっている。
 タスマニアのスパークリングは、お買い得度の高さと品質から、世界的な注目を集めている。アコレード傘下のアラスは、オーストラリアのトップを行く長期熟成タイプのスパークリング「E・J・カー・レイト・ディスゴージド」をタスマニアで栽培されるシャルドネとピノ・ノワールから造っている。ジャンツは、シャンパーニュのルイ・ロデレールがヒームスカーク・ワインとジョイント・ヴェンチャーを組んで立ち上げたが、ロデレールはその後に離脱。現在はヤルンバのヒル・スミス家が所有し、スパークリングワイン専業メーカーとして気を吐いている。ロデレールのシェフ・ド・カーヴ、ジャン・バティスト・レカイヨンは最近のインタビューで、名前はあげないが、タスマニアの優れたスパークリングを飲んだと明かしている。
 また、スティルワインも注目されている。デリケートでライトボディなスタイルが広がる流れの中で、本土の生産者が、調達先として重視するようになってきた。異なる地域のブドウをブレンドして造るペンフォーズの白のフラッグシップ「ヤッターナ」は、タスマニア南部ダーヴェント・ヴァレーのシャルドネが重要な役割を果たしている。

本土からの投資が盛ん シャルドネ、ピノ・ノワール、スパークリングが脚光

 投資も盛んになっている。オーストラリア最大の家族経営ワイナリーの1つヤルンバのヒル・スミス家は2007年、ダルリンプルを買収した。南オーストラリア州に本拠を置くクレッグリンガー・ワイン・エステーツも2001年、ナインス・アイランドとパイパーズ・ブルックを傘下に収めた。南オーストラリア州アデレード・ヒルズで、ショウ&スミスを手掛けるマイケル・ヒル・スミスMWは2011年、南部コール・リヴァー・ヴァレーにトルパドルを設立し、シャルドネとピノ・ノワールを生産している。ピノ・ノワールについては、ジャンシス・ロビンソンが国際的なイベント「ピノ・ノワール ニュージーランド 2017」内の「偉大さの探求 国際的なピノ・ノワール試飲会」で偉大なピノ・ノワールの1本にトルパドルを選び、改めてこの地の可能性に光が当たった。
 ワイン産地は島の北と南に集中している。北の内陸部テイマー・ヴァレーと、森に囲まれ雨の多い海に近いパイパーズ・リヴァーは、オーストラリアで最も冷涼な産地の一つ。パイパーズ・リヴァーは川によって気温が穏やかに保たれ、ヴァレーによって霜が防げている。オーストラリアで最南端の産地である南部ハオン・ヴァレーは、ハングタイムが長くしっかりと熟したワインを産する。それより北のタスマニア州都ホバートの北に広がるコール・リヴァー・ヴァレーと北西に広がるダーヴェント・ヴァレーからは、優れたシャルドネ、ピノ・ノワール、リースリングを産する。畑によっては、熟度の高いカベルネ・ソーヴィニヨンにも出会える。
 
スパークリングワインが全体的に高い評価

 今回は国内のインポーターに呼び掛けて、主要なシャルドネ、ピノ・ノワール、スパークリングワイン28銘柄を集めた。オーストラリアのワインコンサルタント、カビータ・フェイエラも加わってブラインドで試飲した。24銘柄が、平均点が85点以上の優良に選ばれた。スパークリングワインの評価が全体的に高く、シャンパーニュに対して、コスト・パフォーマンスの高いスパークリングと評価されていることが裏付けられた。

傑出したワインの評価はこちhttps://www.winereport.jp/archive/1428/

優良なワインの評価はこちhttps://www.winereport.jp/archive/1429/

山本昭彦「繊細さと緊張感のあるワインを求めて、冷涼な産地を探す動きがある中で、タスマニアはオーストラリアだけでなく、世界で注目すべき産地であることを再確認した。スパークリングワインは、栽培と醸造の技術のチューニングが追い付いていないが、イングリッシュ・スパークリングと並んで、シャンパーニュの対抗馬となるポテンシャルを有している。シャルドネはアデレード・ヒルズやヴィクトリア州と肩を並べる高品質なものが多かった。ピノ・ノワールも全房発酵をうまく使って成功しているワインがある。小さな産地のため、日本の価格はやや高めだが、大きな可能性を秘めている」

大橋健一MW「スパークリングワインは大きな差がつかなかった。今より早く摘むと、ドザージュの量が増えたりするだろう。ある意味、こういうバランスはイタチごっこな気もする。香りから甘い印象も受けるが、ミッドパレットをふくらませたい狙いもわかる。しかしフィニッシュをシンプルに感じるものが多い。収穫時期、熟成期間も含めて、完成の域というより過渡期ではないか。ピノ・ノワールは本土に比べるとセイバリーで、アーシーネスを逆手にとって複雑性を取り込んでいる。シャルドネはテクスチャーの丸いものが多い。しかしいずれも傑出したワインがあった」

大越基裕「相対的に酸が強いので、どのようにバランスをとっているかが、味わいのスタイルを決めている。いくつかのスパークリングは残糖を強めに感じた。酸がある割には、ドザージュのせいでフィニッシュがゆるく、正確性を出せないものもある。スティルワインはシャルドネの方がいい。うまみを乗せて、クリーンでナチュラル。ピノ・ノワールは酸が強いと、余韻がタイトになる。うまみ、果実味、酸のバランスがどうとれているかが重要。ドメーヌAはよく熟しているが、清涼感も共存していてバランスがとれている」

カビータ・フェイエラ「全体に品質が高く、悪いワインはなかったが、スパークリングワインは力強さや複雑性を欠くものもあった。アラスは傑出していたし、クレッグリンガーもよかった。シャルドネはバランスがとれていて、大半が偉大だった。ジョセフ・クローミーやスターゲイザーもよかった。ピノ・ノワールは全房発酵によって、茎っぽさが出ているワインもいくつかあった。ドメーヌAはよく熟していて、タスマニアではなく、ヤラ・ヴァレーか西オーストラリアのようだった」

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