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土壌別にリューディを試飲、ツィント・フンブレヒトのリースリング

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 アルザスはモザイク状の複雑な土壌が広がっている。火山性岩、石灰岩、花崗岩など年代も性格も異なる土壌が入り組み、複雑なワインが生まれる。見本市「ミレジム・アルザス」を回ると、生産者は土壌と関連付けてグラン・クリュのリースリングやピノ・グリを試飲させる。最もテロワールを明確に表現していた造り手の一つが、ドメーヌ・ツィント・フンブレヒトだった。
 フンブレヒト家は1620年から続くワイン造りの家系。ドメーヌは1959年にツィント家とフンブレヒト家の結婚によって生まれた。63年生まれの当主オリヴィエ・フンブレヒトは、89年にフランス人初のマスター・オブ・ワインを取得した。95年ごろからビオディナミに取り組んだ先駆者で、1998年にエコセール、2002年にビオディヴァンの認証を得た。アルザスのリーダーで、数少ないMWのワインメーカーに、火山性、石灰岩、花崗岩の基本的な違いについて聞いた。
 アルザスの火山岩性土壌は3億5000万年前に生まれた。急斜面に広がるやせた土壌は硬い岩で、耕作に苦労する。酸は高めで、pHは5.5-8。ワインはミネラル感に富み、塩気を帯びた味わいになる。フリンティで、ガンパウダーやスモークのノートを帯びる。熟成に時間を要する。石灰岩は対照的な性格だ。生まれたのは少し若く、2億5000-8000万年前。火山岩より栄養分があり、冷たく、水はけがよい。pHは7-8と高め。耕作は火山岩ほど苦労がなく、カバークロップも容易に植えられる。ワインは火山岩より重さがあり、生き生きして、シトラスの性格を帯びる。花崗岩はマイカ(雲母)を含む。ワインは温かさがあり、おおらかで、フルーティな性格になる。
 フンブレヒトは6つのコミューン(村)に41haを所有する。7つのリューディのリースリングを生産している。土壌と味わいの関係を探るには最適な造り手だ。
 最南端タン村のグラン・クリュのモノポール「ランゲン・ド・タン クロ・サンテュルバン」は南向きの70度の急斜面で、火山岩に堆積性砂岩が交じる。

「ツィント・フンブレヒト リースリング グランクリュ ランゲン・ド・タン クロ・サンテュルバン 2016」(Zind Humbrecht Riesling Grand Cru Rangen de Thann Clos St.Urbain Grand Cru 2016)はフローラル、鮮烈で、明るい酸、石をこすり合わせたような鉱物感、ストラクチャーがしっかりしている。フェノリックスのグリップがあり、ほろ苦みと重厚感を与えている。海水を連想させるほど塩気の強いフィニッシュ。硬質で開くのに時間がかかる。長期熟成タイプである。93点。

 「世界の偉大なワインはすべてタンニンが重要な役割を果たしている。熟した果皮からの抽出が非常に大切だ。14-24時間にわたりスキンコンタクトしている。熟成を保証するのがタンニンだ」とオリヴィエ。ルイ・ロデレールのシェフ・ド・カーブ、ジャン・バティスト・レカイヨンも「シャンパーニュの熟成力を決めるのは酸ではなく、ドライ・エクストラクトだ」と語っている。
 「クロ・ヴィンスヴュール」はユナヴィール村のモノポール。2億6000万年前のムッシュカルク(貝殻石灰岩土壌)から生まれる。

「ツィント・フンブレヒト リースリング クロ・ヴィンスヴュール 2016」(Zind Humbrecht Riesling Clos Windsbuhl 2016)は、レモンオイル、カキ殻、スティーリーで、果実の純粋さが際立っている。熟度の高さと背すじの伸びるようなキレのよい酸が、拮抗しながらも調和している。レーザー光線のように焦点のあったフィニッシュ。94点。

 石灰岩主体でも、マール(泥灰岩)が交じると性格が変わる。

「ツィント・フンブレヒト リースリング クロ・ハウゼレル 2016」(Zind Humbrecht Riesling Clos Hauserer 2016)はグランクリュのヘングストの麓にあるリューディ。斜面下部にあるため、表土が深い。石灰岩をマールが覆っている。ブルゴーニュの斜面下部と同じ。リッチで、ストラクチャーがしっかりしている。果実のヴォリューム感があり、残糖と酸のバランスがよい。早くから楽しめる親しみやすがある。「熟成が早い。熟成して出てくる香りはペトロール香ではなくミネラル香というべき」という。92点。

 花崗岩の代表的なグランクリュは「ブランド」。

「ツィント・フンブレヒト リースリング グランクリュ ブランド 2016」(Zind Humbrecht Riesling Grand Cru Brand 2016)はピンク色の花崗岩土壌。南から東南向きの急斜面。熟度が高く、白桃に黄桃が交じり、洋ナシ、クリーミィで、わかりやすいキャラクター。広がりがあり、アルコール度も高い。火山岩、石灰岩とは全く異なり、エキゾチックな性格で、フィニッシュも肉厚でおおらか。94点。

 多忙なオリヴィエだが、驚くべきニュースを聞いた。カナダ・オカナガンの「ファントム・クリーク・エステーツ」(Phantom Creek Estates)のコンサルタントを始めたのだ。MWワインメーカーの中でもトップ品質を行く彼の最初にして唯一のコンサルタントだ。既に現地を3回訪れて、火山岩と粘土の土壌に可能性を感じているという。バイオダイナミックスへの移行を手伝い、ピノ・グリーとリースリングを生産する。リリースは来年春の予定。ブルゴーニュの生産者も注目する土地だけに楽しみだ。
 新世界で注目するリースリングについては、答えが返ってこなかったが、好きなワインは、カリフォルニアのリッジのジンファンデルとニュージーランドのマイケル・ブラコビッチMWのクメウ・リヴァーだという。

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