世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. 若いリースリングのペトロール香は欠陥

若いリースリングのペトロール香は欠陥

  • FREE
 リースリングの特色はペトロール香である。そのように教えているワインスクールや、思い込んでいるソムリエは少なくないだろう。認識を改めた方がいい。アルザスの生産者や生産者委員会では、若いリースリングのペトロール香は欠陥だという考えが定着している。
 オリヴィエ・フンブレヒト。ドメーヌ・ツィント・フンブレヒトの当主で、1989年にフランスで初めてマスター・オブ・ワインを取得した醸造家でもある。89年から父と一緒に働き始め、約30ヴィンテージを手がけてきた。米国では「リースリングの神」と呼ぶファンもいる。その彼が「若いリースリングにペトロール香が見つかるのは欠陥だ」と言い切る。大きな原因として、未熟なブドウの収穫や還元的な醸造を挙げる。
 「リースリングが熟すには、110日から120日間が必要だ。未熟なブドウを早く収穫すると、ペトロール香が出やすい。機械収穫のブドウにも出やすい」
 フンブレヒトの収穫はビオディナミに転換してから、周囲の生産者より、2、3週間早くなり、熟度の問題は全くない。1995年ごろからビオディナミに取り組み、1998年にエコセール、2002年にビオディヴァンの認証を得た。ビオディヴァンの会長も務めた。
 「ビオディナミに転換して大きな驚きだったのは、収穫が早くなったことなんだ。生理的な成熟が、糖度の上昇よりも早く訪れる。糖度が上がったのに、生理的な成熟をしていないブドウを摘むことがない」と明かす。
 リースリングは還元しやすい品種だ。ステンレスタンクで酸素との接触を抑制する形で醸造したり、オリと長く接触させたり、亜硫酸が少なすぎると、ペトロール香が出るリスクが高まる。還元しすぎない形で醸造することで問題は防げるという。オリヴィエは伝統的なアルザスの大樽を使用して、問題を防いでいる。
 熟成したリースリングには、いわゆる「ペトロール香」は出てくる。だが、その呼び方は適切ではないという声も多い。アルザスワイン委員会のマーティング・コンテンツ・マネジャーでエノロジストのティエリー・フリッチは「若い頃にでる香りは、ペトロールというよりヴェジタルというべきだろう。熟成してから出る香りは、『ミネラル香』と呼びたい。テロワールによっても違いがある。花崗岩や石灰岩土壌のリースリングから出にくい」と語る。
 オリヴィエも熟成香については、「ミネラル」「ヨード」「濡れた石」などの言葉で表現したいという。
 ペトロール香の素は「1,1,6 trimethyl-1,2-dihydronaphthalene」(1,1,6-トリメチル-1,2-デヒドロナフタリン)という成分で、「TDN」と呼ばれれている。ブドウの果皮に蓄積されるカロチノイドという香りの前駆体で、通常は熟成によって前面に出てくる。この濃度が高すぎると、若いころからペトロール香が出る。暑いヴィンテージや新世界の日照の強い産地で造られるリースリングにも出やすい。冷涼な産地でも、健全なブドウを得ようと除葉を過度にすると出やすい。
オリヴィエ・フンブレヒト
ティエリー・フリッチ

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP