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ブラインド・テイスティングで出題したいワイン

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 ブラインド・テイスティングの大会が、人気を集めている。ワインスクールの人気講座となり、ワインショップで大会を行ってもすぐに出場者が集まるそうだ。ソムリエ協会でも、コンテストを行っている。

 本来はワインのスタイルや品質を客観的に評価するプロのための手法だが、品種や産地をあてるゲーム的な部分がクローズアップされているようだ。スクールの生徒やショップのヘビー・ユーザーは勝負系の愛好家が多いから、需要があるのはわかる。大会のために大量のワインを購入する客もいるという。ソムリエコンクールや、マスター・オブ・ワインに代表される資格試験とは別物で、日本独自の現象のように思える。

 あるワインショップの店員は「最近、注目されているのはクシノマヴロとネレッロ・マスカレーゼです。出題の確率が高く、それらを買い求めるお客様が多い」と語った。理由がよくわからないが、ギリシャやイタリア、ジョージアあたりが狙われるらしい。日本のワイン市場で注目度が高まっているワインが選ばれている点で、ワインの普及に役立っているようだ。

 ブラインド・テイスティングの大会は、出題者の経験に大きく左右される。フランスやイタリアなど旧世界のワインを専門とするワインスクール講師やソムリエがワインを選んだら、出題範囲が広がらず、面白みに欠けるかもしれない。新世界に範囲を広げると、ハードルが上がるのは間違いない。

 難しくするには2通りの方向がある。一つはマイナーな産地や品種を入れること。生産量が増加しているルーマニアのフェテアスカ・ネアグラやジョージアのキシを入れたら、難易度はかなり高くなるだろう。もう一つは、国際品種の中から新世界とは思えないワインを選ぶこと。こちらは出題者のセンスと知識が問われる。

 私がコンテストの出題を任されたと仮定して、後者のパターンで出題するワインを提案してみたい。本来は入手が容易で、5000円くらいまでのワインを選ぶのが正しいのだろうが、今回は値段と入手しやすさは無視した。2018年の1年間で飲んだワインを振り返り、驚かされたワインの中から選ぶ。

 まずはシャルドネ。アルゼンチンの「ボデガ・チャクラ」は、サッシカイアを所有するインチーザ・デッラ・ロケッタ一族が南部パタゴニア地方で取り組むプロジェクトだ。ちょっと反則だが、ムルソーのジャン・マルク・ルーロがコンサルタントを務める。ルーロ以外の何物でもない味筋だ。南極に近いパタゴニアは、極めて冷涼で、スパークリングワインも生産されている。

 サム・ハロップMWがニュージーランド・ワイヘキ島で造る「セダリオン」。新樽を抑え、還元的に造っている。シャブリとムルソーの中間をいき、ミネラル感あふれている。トップワインコンサルタントが採算度外視で造ったワインは、ニュージーランドの可能性を感じさせる。品種はわかっても、産地を詰めるのは難しい。背景の物語がある興味深いワインだ。

 ピノ・ノワールは、最もブラインドのゲームに登場する。コブ・ワインズがソノマ・コーストで造る「ライス・スピヴァック・ヴィンヤード」は早摘みでアルコール度が低い。セイバリーで、全房発酵からくる抑制感と複雑性がある。カリフォルニアという結論はなかんか出ないだろう。ソノマ・コーストにたどり着くのはさらに難しい。

 エドウォルド・チャドウィックのエラスリスが、アコンカグア・ヴァレーで手がける「ラス・ピサラ」。太平洋の影響を受ける冷涼なシスト土壌から生まれるピノ・ノワールは、チリの既成概念を覆す。エレガンスあふれるワインだ。ブルゴーニュよりも淡い色調とシルキーなテクスチャー、緊張感のある味わい。まぐれ当たりでも、不可能に違いない。

 カベルネ・ソーヴィニヨンは、ちょっとハードルが低い。スーパータスカンの「カステッロ・デイ・ランポッラ ダルチェオ」。カベルネ・ソーヴィニヨン85%とプティ・ヴェルド15%。標高400mを超すパンツァーノ・イン・キアンティらしいフレッシュ感とバルサミックなニュアンス。果実とタンニンの熟度の高さがポイントだ。

 カリフォルニアのブロック・セラーズがサンタ・バーバラで造る「ホール・クラスター・カベルネ・フラン」は、ロワールのカベルネ・フランと答えれば、大したもので、カリフォルニア南部にはたどりつかないだろう。倉庫を改造したバークレーのセラーで試飲したときは驚いた。

 ソーヴィニヨン・ブランで1つだけ挙げるなら、チリの「レイダ レセルヴァ」。フンボルト海流が流れる太平洋からわずか4キロのレイダ・ヴァレーから生まれる。冷涼感あふれ、生き生きした酸と引き締まったボディ。1000円台が信じられない。

 世界を旅していると、様々なワインに出会う。新世界の優れた造り手は、冷涼な産地を探して、レス・オーク、レス・フルーツのエレガントな方向に向かっており、旧世界のスタイルに近づいている。

 大橋健一MWは「品種を最初に決めてはだめ。あてにいくのではなく積みにいかなければ」と話していた。

 それがプロの中のプロが行うブラインド・テイスティングであり、勘に頼る部分があるうちはだめということなのだろう。道ははてしなく遠い。

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