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フンブレヒトのミネラルと「スプートニク」のビビッドなフレンチの饗宴

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 2016年3月にジャンシス・ロビンソンとニック・ランダー夫妻が来日した際、料理評論家のニックは「パープル・ページ」のコラムで、東京にある3軒のレストランの名前を挙げた。赤坂見附の「すし匠 齋藤」、ミッドタウンの「てんぷら山の上」、そして六本木のフレンチ「ル・スプートニク」が、アジアツアーで最良のレストランだったというのだ。

 すし匠では一緒にワインを楽しんだが、ニックの心をとらえたのはスプートニクだったようだ。食材、調理法、色合いなどを細かく描写しながら、料理の独創性を称賛している。スプートニクは、15年に開店してすぐに訪れていたから知っていたが、短期間の来日でこの小さな店をかぎつけたニックの鼻の鋭さに感心した。

 しばらくご無沙汰していた、この1つ星レストランに久しぶりにうかがった。

 和の食材を取り入れて、ビビッドな色彩感覚と複雑な食感が交錯するファンタジックな料理は、さらに洗練の度を深めていた。

 口開けから緊張感の張り詰めた小皿がこれでもかと続く。スペシャリテの1つがゴボウ・チップスの山塊の上に乗った魚料理だ。冬の時期はワカサギのフリット。サクサクした歯ごたえと、ゴボウの香り、はらわたのほろ苦みが、シャンパーニュを呼ぶ。シャルル・エドシックのブリュット・レゼルヴは、このお皿のためにあるようなグラスだった。

 食べるたびに花畑をさまよう気分に誘われるのが、バラのビーツとフォアグラ。花びらに見立てたビーツと土台のテリーヌが一体となって、華美な真紅に染められた夢見心地の世界に漂う。浮遊感のある一皿。

 ロックフォールのソースでいただく炭をまぶしたカキ。目に鮮やかなマンゴとハタの合わせ。旬の鹿まで、驚きを秘めた皿が続いた。

 こうした少量多皿のスタイルは、ペアリングメニューでも頼まない限り、ワインと合わせるのは難しい。経験的に言って、1本で行くなら白ワインがカバー範囲が広い。シャルドネは面白みに欠けるので、エキゾチックな風味も受け止めるリースリングが最適な品種となる。アルザスのドライなリースリングは懐が深かった。

 「ドメーヌ・ツィント・フンブレヒト リースリング ブランド グランクリュ 2015」(Domaine Zind Humbrecht Riesling Brand Grand Cru 2015)は、洋ナシ、黄桃、ほのかにオイリーな口当たり、スパイシーで、砕いた黒い岩、火山性の花崗岩土壌を明確に感じさせる。濃密で力強い果実は、生き生きした酸のおかげで重くならず、塩気を帯びたほろ苦いフィニッシュはグリップがある。日本リカー。95点。

 アルザスには数多くのビオディナミ生産者がいるが、フンブレヒトの安定度とスケール感は群を抜いている。
バラのビーツとフォアグラ
ゴボウのチップスの山に乗ったワカサギ
ロックフォールのソースでいただくカキ
鹿
支配人の千葉収之さん(左)とオーナーシェフの高橋雄二郎さん

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