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高密植度への挑戦、ユベール・ラミーの恐るべきサン・トーバン

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 ブドウの樹の密植度を増すと、根が地下深くに伸び、養分吸い上げる。フランスの生産者がよく言う言葉だが、何が違うのか。それを実感できる機会は少ない。ブルゴーニュのサン・トーバンで気をはくユベール・ラミーでその違いを体験した。


 サン・トーバンはピュリニー・モンラッシェの北西の谷づたいに広がる。時間が止まったような村だが、意欲的な造り手が多い。当主オリヴィエ・ラミーは1990年ごろから、畑の密植度を増やす実験に取り組んできた。通常はヘクタール当たり1万~1万2000本のところを、いくつかの畑の一部区画で2万本、3万本、4万本に増やしている。商品化されているのは、ピュリニー・モンラッシェ・レ・トレンブロとサン・トーバンのプルミエクリュ・デリエール・シェ・エドゥアール。通常のキュヴェと「オー・デンシテ」(ハイ・デンシティー)の2種を世に出している。


 樽で熟成中の2014から、2銘柄の通常のキュヴェとオー・デンシテを比較した。違いは明らかだった。力強さ、深み、奥行、スケールの大きさが違う。ピュリニー・モンラッシェ・レ・トレンブロのオー・デンシテはヘクタール当たり2万2000本の区画から。通常のキュヴェはピュリニーらしい繊細な味わいだが、オー・デンシテはより焦点があっていて正確。黄桃、湿った石灰岩の香りが立ち上がり、まろやかだが、かめるような濃密な質感。トレーニングして、筋肉が厚くなったアスリートのようだ。

 サン・トーバンのデリエール・シェ・エドゥアールはさらに明確に異なる。南東向きの畑の3万本の区画から。通常は1メートル×1メートルに1本だが、その3倍の密度になる。強烈なミネラル感と熟したライムやゴールデンデリシャスの香り。タイトで、綱渡りするような緊張感がみなぎっている。アルコール度は高いが、酸も同様に高く、エネルギーが詰まっている。恐るべきサン・トーバンのプルミエクリュだ。トップクラスのピュリニー・モンラッシェのプルミエクリュに匹敵する。
 プロヴィナージュで株を増やしていたフィロキセラ以前は2万本以上の密植度だったが、オリヴィエが挑戦を始めたのは昔に回帰するためではない。「よりテロワールを表現するため。酸もアルコール度も上がるが、それが狙いではない。これは知的なワインだ」。
 シャサーニュ・モンラッシェなどほかの畑でも、密植度を高める区画を増やしている。樹齢が高まれば、オー・デンシテを生産するという。樹間が狭いから作業は大変だろう。1本につける房は少なく、収量は低い。ラミーの村名のサン・トーバンやサントネイの区画違いの試飲も楽しい作業だ。高騰を続けるコート・ド・ボーヌの有名な村に代わる選択肢として間違いない。

2015年11月2日 サン・トーバンのユベール・ラミーのキュヴェリエで

ユベール・ラミー ピュリニー・モンラッシェ・レ・トレンブロ 2014
88~90点
ユベール・ラミー ピュリニー・モンラッシェ・レ・トレンブロ オー・デンシテ 2014
90~92点
ユベール・ラミー サン・トーバン・プルミエクリュ・デリエール・シェ・エドゥアール 2014 
89~91点
ユベール・ラミー サン・トーバン・プルミエクリュ・デリエール・シェ・エドゥアール オー・デンシテ 2014
91~93点

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