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米ローヌ品種の総本山、本家ボーカステルと変わらぬタブラス・クリーク

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 ローヌ品種は米国で確かな存在感を放っている。
 カリフォルニア州だけでなく、ワシントン州やオレゴン州でも生産者が増えている。その普及に大きな役割を果たしたのが、パソ・ロブレスのタブラス・クリークだ。
 シャトー・ヌフ・デュ・パプの名門シャトー・ド・ボーカステルのペラン家と輸入代理店のロバート・ハースが、ジョイント・ヴェンチャーで始めた。1989年に設立し、栽培も醸造もローヌと全く同じ手法で、生産を始めた。
 そのために必要なのがローヌ品種の苗木だ。ペラン家はローヌの畑から選んだ木を輸出。3年の検疫期間が終わるのを待って、自社の苗床で増やし、接ぎ木するところから始めた。お金も時間もかかる。それだけ本気だったのだ。ブルゴーニュ品種の生産者は、その手間を省いて、畑で切った枝を密輸し、スーツケースクローンと呼ばれるようになった。それも情熱の発露ではあるが。


 ワイナリーには、そのマザー・ヴァインが植えてある。赤がムールヴェドル、グルナッシュ・ノワール、シラー、クノワーズ、白がルーサンヌ、ヴィオニエ、マルサンヌ、グルナッシュ・ブラン。そこから増やしたクローンは、タブラス・クローン、あるいはボーカステル・クローンと呼ばれて、ローヌ生産者が使うようになった。その数は500軒とも言われる。


 テイスティング・ルームの玄関では、グルナッシュ・ブランの苗木が9・95ドルで販売されていた。私もカリフォルニアに住んでいたら、植えてみたくなるだろう。何せ、あのボーカステルで栽培されているのと同じ樹なのだから。
 醸造も本家のボーカステルと同じ。大樽で熟成している。試飲したワインの味筋も当然、本家と変わらない。フラッグシップのエスプリ・ド・タブラス2011とエスプリ・ド・ボーカステル2010を、比べて飲んだ。2011年から、「ボーカステル」の名前を外して、「タブラス」に変えた。ボーカステルの名前に頼る必要がなくなり、一本立ちしたという理由からだ。


 いずれもアルコール度は14・5%。気候の違いからローヌより高いが、抑制された上品なバランス感はボーカステルのシャトー・ヌフ・デュ・パプと共通している。ダークチェリー、地中海の灌木、ハーブの香り。ムールヴェドルの香り高さがよく表現されている。ジューシーで、ちょっとピノ・ノワールを思わせる。冷涼な2011年なだけに、凝縮度よりはエレガンスが目立つ。私は濃厚な2010より2011が気にいった。ムールヴェドル40%、グルナッシュ・ノワール30%、シラー25%、クノワーズ10%。
 カリフォルニアのワイナリーはときに商売気がありすぎて、腰が引けるが、タブラス・クリークのように、背景の物語を説明してくれるのは大歓迎だ。

(2014年9月9日 カリフォルニアのパソ・ロブレスで)
タブラス・クリーク・ヴィンヤード エスプリ・ド・タブラス 2011
年に一度は飲みたい度:92点 
現地価格は55ドル 日本価格は7800円
輸入元:ジェロボーム

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