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カナリア諸島のテネリフェ島で初めてフィロキセラが発見された。自根のブドウ樹を栽培する500年を超す伝統が脅威にさらされている。諸島全域のワイン生産者が封じ込めに向けて緊急対策に取り組んでいる。
この発見はカナリア諸島農業観光・ワイン観光学部が8月8日に発表した。ブドウ樹に寄生するフィロキセラは19世紀のヨーロッパで広範なブドウ畑を壊滅させたことで悪名高い。大西洋に浮かぶカナリア諸島は、隔絶された環境を盾として、接ぎ木されていないブドウ樹による栽培を続けてきた。
調査によると、フィロキセラは感染したブドウ樹がテネリフェ島の個人宅の庭に植えたことで持ち込まれ、そこから放棄されたブドウ園に広がった可能性がある。このブドウ園での存在は8月1日に確認され、その直後に2件目の感染が疑われる例が報告された。
2個所で感染が発見されて、カナリア諸島政府とテネリフェ島議会は緊急会議を開いた。群島全域のワイン生産者が集まり、感染拡大を防いでフィロキセラを封じ込めるプロトコール(規定)を発表した。
カナリア諸島ワイン生産者協会(AVIBO)は影響を受けたブドウ樹と根を隔離・処分して、汚染された土壌と機器を消毒。感染地域を隔離し、ブドウ畑間を移動する前にブーツや道具を消毒し、収穫箱に入れた葉の運搬を避けて、収穫期間中の監視を強化するなど、厳格なガイドラインを定めた。
テネリフェ島は3200haのブドウ畑を誇り、6つの原産地保護呼称の畑で100を超すワイナリーがワインを生産している。フィロキセラはワイン生産に頼る島民の生計と固有の生物多様性の脅威となる。根本的な解決策は耐性のあるアメリカ産の台木に在来種のブドウを接ぎ木することだが、費用と何年もの移行期間がかかる。
スペイン領のカナリア諸島はアフリカ大陸の北西沿岸に近い大西洋に浮かぶ7つの火山島。大西洋のハワイと呼ばれる。ブドウ畑の栽培面積が減れば、年間1600万人を超すカナリア諸島のワインツーリズムがもたらす観光収入と農村部の雇用にも影響がでる。
諸島のブドウ樹は大量選別(マッサール・セレクション)により、ブドウ樹を栽培農家同士で引き継いできた。諸島では既に収穫が始まっており、感染防止を徹底しないと諸島全体に広がるリスクが高まる。

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