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シャトー・レ・カルム・オー・ブリオンの支配人兼醸造責任者ギョーム・プーティエに初めて会ったのは2023年11月。東京で開かれたUGCB試飲会で2020を試飲して目が覚めた。その時は彼のブースに立ち寄るソムリエやインポーターはほとんどおらず、じっくりと話せたが、あっという間にスターの階段を昇った。
ワイン・アドヴォケイトとヴィノスが高い評価を与えて、フィガロの選んだ2023年のフランス最高の50人のヴィニュロンの1位に選ばれた。ネゴシアンもようやく日本市場向けに動き出した感があり、コマーシャル・ディレクターのティボー・リシャールがプロモーションで来日した。
私も2024年から3回、ペサック・レオニャンのシャトーを訪れている。2024年のプリムール2023試飲会ではギョームにじっくり取材する時間があったが、2025年のプリムール2024試飲会は5分の遅刻も許されない混雑状態だった。困難な2024ヴィンテージも成功をおさめた。
シャトーの成功の要因はまず資金力。2010年にシャトーを買収した不動産実業家のパトリス・ピシェは、2015年にセラーを刷新して大きくした。セメントタンクや大樽を発酵に使い、アンフォラやフードルで熟成させる。2024年に活躍した密度選別機のデンシベ(Densibaie)と光学式選果台も備えている。
オー・ブリオンからわずか5分の市街地にあるアーバン・シャトー。畑の土壌は砂利、粘土、砂、石灰岩が含まれて水はけがよい。芽吹きと開花は早い。クロに囲まれて、気温がほかより3度高く、霜に悩まされることはない。
栽培比率は左岸に珍しいカベルネ・フラン45%、カベルネ・ソーヴィニヨン25%、メルロ30%。80年を超す自根の樹もわずかに残されている。右岸で多用されるカベルネ・フランはフローラルでフレッシュだが、熟さないとグリーンになるので左岸では少量しかブレンドしない補助品種だ。ここはテロワールが適している。
シャプティエで経験積んだギョーム・プーティエ
ギョームはシャプティエで働き、ゴノン(サンジョセフ)やシャーヴらから刺激を受けている。約5割を超す全房発酵を大胆に導入している。ピジャージュもルモンタージュもせずに、煎じる抽出(アンフュージョン)を穏やか行っている。これもトレンドだ。
温暖化で14%を超すアルコール度が常態となったボルドーで、ブルゴーニュを思わせるフレッシュ感とエレガンスがここの魅力だ。複雑な風味とシルキーなテクスチャーをもたらす全房発酵がカギとなっている。ただ、全房発酵はpHが上昇して総酸度が下がるリスクもある。ドメーヌ・ド・ラルロのように除梗に回帰するところもブルゴーニュには出てきた。
コマーシャル・ディレクターのティボー・リシャールは「酸を保ってくれる石灰岩が豊かで、酸とミネラル感を保ってくれるんだ」と、こちらの疑問に対する回答を述べた。
シャトーでは機会の少ない、熟成したボトルを試飲した。
「シャトー・レ・カルム・オー・ブリオン 2017」(Chateau Les Carmes Haut-Brion 2017)はカベルネ・フラン41%、メルロー30%、カベルネ・ソーヴィニヨン29%。全房発酵を45%導入した。65%新樽で20か月間の熟成。柔らかい口当たり、ブラック・ラズベリー、杉、アール・グレイ、シャクヤク、きめ細かいタンニン、繊細な酸味で活力がある。ブルゴーニュを思わせるフィネスがあるが青くはない。フレッシュな余韻。93点。
「シャトー・レ・カルム・オー・ブリオン 2019」(Chateau Les Carmes Haut-Brion 2019)はカベルネ・フラン42%、カベルネ・ソーヴィニヨン31%、メルロー27%。全房発酵を60%使用した。フローラルでレッドチェリー、ダークプラム、湿った石、スペアミント、サテンのテクスチャー、きりっとした酸味。タンニンはきめ細かく、骨格は力強い。エキゾチックで引き締まったフィニッシュ。95点。
「シャトー・レ・カルム・オー・ブリオン 2021」(Chateau Les Carmes Haut-Brion 2021)はカベルネ・フラン40%、カベルネ・ソーヴィニヨン35%、メルロー25%。全房発酵は45%。オーク樽70%、18hlフードルのいずれも新樽、アンフォラ10%で熟成した。冷涼だった年でやや内向的だが、樽は溶け込んでいる。レッドベリー、ブルーベリー、ブラッドオレンジ、ラベンダー、黒煙、控えめなタンニン、はつらつとした酸味。スパイシーで、ミネラル感に富む余韻が続く。3万2000円。95点。
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