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シャトー・ディケムのイメージは大きく変わった。めったに飲めない神々のためのネクター(Nectar)から、頑張れば手の届く貴腐ワインとなった。
かつては長期熟成されて、いつ世に出てくるのかもわからなかった。現在は春の始まりを告げる3月にリリースされる。プリムール試飲の始まる約1か月前が「イケムの日」だ。2023年が3月11日に公式リリースされた。
LVMHが故アレクサンドル・ド・リュル・サリュース伯爵からイケムを買収し、ベルナール・アルノー会長は2004年に47歳のピエール・リュルトンを責任者に据えた。CEOとなったリュルトンは「イケムは伝説の霧に包まれていた。眠れる姫のようなヴェールを払い、シャンパーニュのように親しめるワインにしたかった」と語った。
それから20年あまり。彼の狙いは達成されている。シャンパーニュほど気楽ではないが、イケムはアペリティフとして食前に楽しめる存在となった。
リュルトンの後を継いで、昨年マネージング・ディレクターに就任したイタリア生まれのロレンツォ・パスクィーニは37歳。同じ路線を歩み、イケムをバイ・ザ・グラスで楽しめるワインにする「ライトハウス」プロジェクトを続けて、ワイン造りを改革している。
有機認証とナチュラルな醸造
貴腐ワインは自然と密につながっている。2022年に有機認証を取得した。気候変動を意識して、カーボン・フットプリントを減らす持続可能なアプローチを行っている。畑の耕起を減らして、電動トラクターで二酸化炭素排出量を削減している。
土壌は定期的に手作業で管理する。20人の女性作業員は担当する区画に精通している。剪定や誘引を行い、収穫前は70万本のブドウ樹の東側の葉を間引く。朝のうちに早く乾燥し、雨に最もさらされる西側を保護する。
醸造もナチュラルにシフトしている。SO2の添加量は20年前の半分に減らして、熟成中の澱引きも減らしている。
2023年のイケムはフィネスと透明感の2021、パワーと豊かさの2022に続いて、バランスとエレガンスが際立っている。21世紀で初めて3年連続のリリースとなった。1948年から1950年、1988年から1990年と同じ偉大なヴィンテージが連続する三部作となった。
2023年の天候は容易ではなかった。春は暖かく雨が多く、べと病が発生しやすかったが、有機栽培の移行で蓄積した樹冠管理などの対策で対処した。9月は乾燥した高温が続いて、貴腐菌の発生が早まり、28日から10月4日の間に4回の収穫が行われた。
「シャトー・ディケム 2023」(Chateau d'Yquem 2023)はヴェルベッティで、ドライアプリコット、砂糖漬けのマンゴ、マーマレードのコンフィ、活力がありフレッシュ。エキスとフェノールが骨格を形作り、高い凝縮度と調和している。トリュフ、蜜蝋、ジンジャー、精緻でエキゾチック。甘みはあるが支配的ではない。沈み込むような重厚さではなく、綿飴に乗ったような浮遊感にひたれる。グラスの底にわずかに残った液体のアロマを吸い込み、最後の一滴をなめると、ドラマが再開し、永遠の悦楽がエンドレスに続く。セミヨン70%、ソーヴィニヨン・ブラン30%。残糖は153g/L。99点。
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