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干ばつをどう乗り切ったのか、過去最高のラフルールとレ・パンセ(ボルドー2025プリムール)

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 ペトリュスのベルーエが飛び入り試飲

 

 ボルドーは産業的なイメージがあるが、右岸は違う。とりわけポムロール。小さな村ではだれもが友達だ。2025プリムール取材の一番手だったラフルールで、改めてそれを感じた。醸造責任者のオムリ・ラムと一緒に狭い熟成庫で試飲していると、ジュリーとバティスト・ギノドー夫妻が、ひげ面の男を連れて入ってきた。
 

 「元気かい?」


 だれだこの男は?


 顔を見て気づいた。


 向かいのペトリュスの醸造責任者オリヴィエ・ベルーエだった。


 友人を連れて飛び入りで試飲に来たらしい。数分しか離れていないポムロールを代表するシャトーは同士は親密な関係だから不思議はない。シャンボール・ミュジニーで、クリストフ・ルーミエがいきなり、ヴォギュエに試飲に現れるようなものだ。
 ペトリュスとラフルールの関係は深い。ギノドー家の単独所有となる前、所有者だった高齢のマリー&テレーズ・ロバン姉妹を手伝うため、ペトリュスから支配人のクリスチャン・ムエックスと前醸造責任者ジャン・クロード・ベルーエが、1981年から4ヴィンテージを仕込んだほどだ。

 


 私の今回のラフルール試飲の焦点は、昨年8月に発表した気候変動対策の提言をどのように実行したか。ここでは2025年の夏は干ばつで、熱波により気温は記録破りの41.5度に達したという。ラフルールのチームはラフルールとパンセ・ド・ラフルールにごく少量の水分を与えた。


灌漑でなく根元に水をたらすだけ


 オムリはそれを「灌漑」と呼びたがらない。確かに、ドリップ・イリゲーションとは違っている。水を落とすためのパイプも用意していない。6月から5回、樹の根元に少量の水を注いだだけ。手作業で手間がかかる。それでも、2025年のような年には効果が得られたようだ。


 驚かされたのはその2つのワインより、最初に試飲したグラン・ヴィラージュ・ルージュとレ・ペリエールだった。フレッシュで活力があふれている。灌漑したのかと思ったら、していないという。


 「ル・グラン・ヴィラージュ ルージュ ヴァン・ド・フランス・ルージュ 2025」(Le Grand Village Rouge  Vin de France Rouge 2025)はメルロー74%、ブーシェ26%。9月4日から18日までに収穫された。生き生きした酸があり香り高い。ラズベリー、ワイルドベリー、アイリス、ジンジャー、きめ細かくてしなやかなタンニンはきれいに溶け込んでいる。軽やかだが風味が豊か。ラフルールの「ヴィラージュ」と呼ぶにふさわしい。素晴らしいヴァリュー。93点。


 「レ・ペリエール ヴァン・ド・フランス・ルージュ 2025」(Les Perrieres Vin de France Rouge 2025)はメルロー56%、ブーシェ44%。フローラルでサワーチェリー、ブラッドオレンジ、砕いた岩、ミント、ブルゴーニュを思わせる香り高さとミネラル感、ジューシーなテクスチャー、タンニンと酸味が調和している。塩味と鉛筆の芯を帯びた余韻が続く。フロンサックの粘土石灰岩質土壌にラフルールから集団選抜した樹を植えた。7-10歳の若樹なのに力がある。94点。


 この2本にはいきなりノックアウトされた。グラン・ヴィラージュは価格も控えめ。ブルゴーニュ信者にこそ飲んでほしいヴァン・ド・フランスだ。


 「レ・パンセ ヴァン・ド・フランス・ルージュ 2025」(Les Pensees Vin de France Rouge 2025)はメルロー67%、ブーシェ33%。ブラック・ラズベリー、ブルーベリー、スミレ、ドライハーブ、程よく肉厚で、しっかりした骨格。しなやかなタンニン、みずみずしい酸味。深みがあり、フレッシュ感が際立っている。ほのかに海の香り。8月28日に収穫を始めた。97点。


砂利土壌のラフルール 粘土のパンセ


 続いて核となる2つのキュヴぇ。4.45haのラフルールの畑はポムロールのプラトー(台地)で最高標高地点(約40m)に位置する。土壌は粘土より砂利が多く、カベルネ・フランの古いクローンであるブーシェの栽培比率がメルローとほぼ同じだ。


 レ・パンセは樹齢の若いセカンドワインとして始まったが、2000年以降は畑を北東から南西に斜めに走る0.7haのリューディ「レ・パンセ」の粘土質土壌を表現している。きわめてポムロール的なワインだ。


 レ・パンセのすぐ北は青い粘土のペトリュス、その先には砂利質と粘土質の混じるヴュー・シャトー・セルタン、そしてラフルールは砂利質土壌と、周辺はポムロールのモザイク土壌が広がっている。粘土一辺倒ではない。その多様性こそがポムロールの面白さなのだ。


 ラフルールはペトリュスと並んでポムロールを代表するワインだが、ポムロールの典型である粘土質土壌ではない。北西(1.35ha)は砂質粘土の砂利、北部と東部(1.45ha)は粘土質砂利、中心部(0.95ha)は砂質砂利土壌となっている。水はけがよいから干ばつには弱いはずだが、ワインはフレッシュ感を保っていた。


 「ラフルール ヴァン・ド・フランス・ルージュ 2025」(Lafleur Vin de France Rouge 2025)はいつもながら最初は控えめ。ゆっくりと開く。輪郭がはっきりしている。ブラックベリー、チェリーのリキュール、タバコ、ラベンダー、肉厚で骨太、深海に潜ったような深い奥行きの先に貝殻と塩気のニュアンスがある。グリップが強く、チョコレートの風味を帯びた長い余韻。20分たって開いて、壮大な絵図が広がった。メルロー49%、ブーシェ51%。最初の5日間だけ軽くポンプオーバーを行った。収穫は8月26日から。98点。


 ここは白ワインも優れていて、右岸の石灰岩質土壌の可能性を感じさせる。


 「ル・グラン・ヴィラージュ ブラン ヴァン・ド・フランス・ブラン 2025」(Le Grand Village Blanc Vin de France Blanc 2025)はソーヴィニヨン・ブラン84%、セミヨン16%。洋ナシ、柑橘、カモミール、生き生きしていて、キリっとした酸。テクスチャーが豊かでほのかなうまみ。91点。


 「レ・シャン・リーブル ヴァン・ド・フランス・ブラン 2025」(Les Champs Libres Vin de France Blanc 2025)はロワールからのソーヴィニヨン・ブラン。ライム、レモンオイル、セージ、さわやかな酸、明るい果実味、バランスがよく、塩味を帯びたフィニッシュ。リフレッシュさせられる。93点。


 どのワインも「これまでで最高」というオムリの言葉に納得だった。ワインはすべてヴァン・ド・フランスで、シャトーは名乗らず、テロワールがワイン名となっている。アペラシオンに関係なく、売れるのは間違いないだろう。

左から、オリヴィエ・ベルーエ、ジュリー&バティスト・ギノドー
6本すべてヴァン・ド・フランス
レ・パンセより色調の濃いラフルール
畑を挟んで向こうがペトリュス
ブルゴーニュより密度の濃いスタッフ

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