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2026年のプリムール・キャンペーンで最大の関心事の1つが、シャトー・レオヴィル・ラス・カーズの醸造所刷新だった。かつては納屋のような薄暗い醸造所に古びた大樽が立ち並び、床にポンプがはっていた。それでも高品質なワインを造っていたのが驚きだった。あのスーパーセカンドがどのように変わるのか。興味津々で朝一番の9時に訪ねた。
サン・ジュリアンの街のジロンド川沿いに現代的な醸造所が立ち上がり、川を望むランクロ(L’Enclos)が壮大に広がっている。地続きのシャトー・ラトゥールの畑よりはるかにスケールを感じさせる。畑を歩く。D2沿いのライオンの門を内側から初めて見た。
門のすぐ内側が2つ目の丘でグランヴァンを生む。最も標高が高い。小石、砂、粘土が地表に広がっている。被覆作物やビオディナミにトライしている。東側を流れるジロンド川の雄大な流れを見ていると、畑の水はけの良さ、温度を一定に保つ川のおかげで、内陸で受けやすい霜害から逃れられることがよくわかる。
醸造所の入り口の足元に広がる石灰岩に彫り込みがあった。目を凝らすと、すべてのリューディ名が刻んである。このような仕掛けは初めて見た。醸造所、トラクターなど農業機器の倉庫、川、道路のD2など位置関係もよくわかる。デジタルの3D地図とは違うアナログだが、地勢がダイレクトに伝わってくる。
醸造所の地上階に足を踏み入れると、壮麗さに圧倒された。木樽を含む50hlから180hlのステンレス発酵槽が100基以上並んでいる。5つのスペースに分かれている。
美術館並みに広いフロア
エレベーターを使ってデレスタージュ
ここではデレスタージュを行っている。地下1階で発酵させたタンクから果帽(果皮や種子、果梗)以外の果汁を取り出して小型のタンクに移し、エレベーターで地上階に移動させる。酸素に触れた果帽と果汁をタンク内で一緒にして地下1階に戻す。マセラシオンして樽に詰める。
ポンプを使って果汁を循環させると果汁が疲れてしまうので、それを避けるために果汁ごとエレベーターで移動させるグラヴィティ・フローのシステムが開発されたのだ。
デレスタージュは、下から抜いた果汁を振りかけるルモンタージュ(液循環)、上部に浮かぶ果帽を突き崩すピジャージュ、穏やかに煎じるインフュージョン(浸出)と並ぶ抽出の手法の1つだ。抽出の効率が高く、色の安定、豊かな果実味、タンニンの洗練などの効果が期待できる。
このシステムは、コス・デストゥルネルが2009年に先駆けて導入し、ペデスクロー、ランシュ・バージュも取り入れている。LVMHが所有するブルゴーニュのドメーヌ・デ・ランブレイも同様の仕組みを取り入れている。
コストのかかる手法なので、資金力のあるオーナー
のワイナリーしか導入できないが、細部にこだわることでワインの品質を向上させている。
大勢のネゴシアンが朝から見学に訪れて、施設を歩き回りながら広い醸造所の複数の場所に設けられたテーブルで試飲していた。フロアの広さは美術館並みだ。
アルコール度は13%台で収量は20hl/ha台
ここでは、サン・ジュリアンのラス・カーズ、別区画のクロ・デュ・マルキ、北部メドックのポタンサック、ポムロールのネナンと4つのワインを造っている。アルコール度はいずれも13%台前半で収量は20hl/ha台。ラス・カーズらしい重厚な酒質だが重くはない。
「シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ 2025」(Chateau Leoville Las Cases 2025)はカベルネ・ソーヴィニヨン82%、カベルネ・フラン12%、メルロー6%。力強く凝縮している。骨組みがしっかりしていて重層的、深みがあり圧倒される。ダークチェリー、カシス、鉛筆の削りかす、黒煙、きめ細かいタンニンはしなやかで、80%の新樽も溶け込んでいる。活力があり、生き生きした味わい。クラシック。80%新樽で18か月間の熟成。収量は23hl/ha。アルコール度は13.65%。97点。
セカンドワイン「シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ ル・プティ・リオン 2025」(Chateaut Leoville Las-Cases Le Petit Lion 2025)はカベルネ・ソーヴィニヨン49%、メルロー48%、カベルネ・フラン3%。カシス、リコリス、プラム、ミント、明るい果実味、程よく濃厚で凝縮感がある。メルローの比率が増えて、若々しくなり近づきやすくなった。2022年からクロ・デュ・マルキとラス・カーズをブレンドしている。13.6%。93点。
アンクロから西に500m離れた「クロ・デュ・マルキ 2025」(Clos du Marquis 2025)はカベルネ・ソーヴィニヨン73%、メルロー21%、カベルネ・フラン6%。ダークチェリー、プラム、リコリス、カシス、しなやかなタンニン、サテンのテクスチャー、デリケートな酸。肉厚だがすっきりしたフィニッシュ。アルコール度は13.6%。収量は23hl/ha。94点。
サンテステフより北にある北部メドックから産する「ポタンサック 2025」(Potensac 2025)はカベルネ・ソーヴィニヨン37%、メルロー41%。石灰岩を砂利の多い粘土が覆う土壌。カベルネは樹齢80年を超す。レッドチェリー、砂利、野ばら、生き生きしたフレッシュ感があり、きめ細かいタンニン。力強く、塩気を帯びた余韻が続く。アルコール度は13.5%。91点。
昨年までプリムールの会場だったシャトー・ネナンはラス・カーズの右岸の隠し玉。ポムロールのプラトーにある粘土砂利土壌。「シャトー・ネナン 2022」(Chateau Nenin 2022)はメルロー62%、カベルネ・フラン32%、カベルネ・ソーヴィニヨン6%。ダークラズベリー、チェリー、タバコ、繊細な酸、力強い果実味、しっかりした骨格。ほのかなチョコレート、バラの花弁、バランスがとれている。アルコール度は13.4%。93点。
地下2階で用意されていた最後の驚きは白ワインだった。当主のジャン・ユベール・ドゥロンは白ワインを飲んでいてかねてから白を計画していたという。
「ラス・カーズ・ブラン ヴァン・ド・フランス 2025」(Las Cases Blanc Vin De France 2025)はセミヨン50%、マルサンヌ25%、ルーサンヌ25%。最初は8品種だったが3つに絞り込んだ。歴史的にもローヌ品種はメドックで使われてきた。ダイレクトプレスし、アンフォラと古い樽の半々で熟成した。柔らかい口当たり、スミレ、ユリ、桃、アプリコット、まろやかで、オイリーなテクスチャー。生き生きしていてエキゾチックなタッチ。塩気を帯びて、余韻に海の香りを帯びている。92点。
メドックのトップシャトーの進化は止まらない。
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