世界の最新ワインニュースと試飲レポート

MENU

  1. トップ
  2. 記事一覧
  3. ワイン発祥の地、ジョージアの博物館を探索

ワイン発祥の地、ジョージアの博物館を探索

  • FREE

 ワイン発祥の地ジョージアを1日、初めて訪れた。8000年のワイン造りの歴史を誇る国は、ワイン造りも食文化も、新しい発見に満ちている。
 東西文明の交差点となるジョージアは、北に5000メートルを超すコーカサス山脈がそびえ、北方のロシアから下りてくる冷気を防いでいる。南はトルコ、東はアゼルバイジャン、南東はアルメニアに囲まれている。西に黒海、東にはカスピ海がある。東部は大陸性、西部はやや湿度の高い亜熱帯気候の影響を受ける。全体には温暖な気候となっている。
 ワイン造りは8000年前、コーカサス山脈の南部で始まったとされる。「Wine」の語源は、ジョージア語の「Ghvivili」(グヴィヴイリ)にあるというのが、言語学者の定説だ。「Ghvivili」が「Ghvino」になり、そこから「Vino」「Vin」「Wine」と変遷されたという。最初のワイン造りに使われたとされる容器の「Qvevri=クヴェヴリ」(甕)が、ジョージア政府の農務省が管轄する国家ワイン局のワイン博物館に展示されていた。日本のグルジアワインのアンバサダーを、農務省から任命された大橋健一MWとともに訪れた。
 このクヴェヴリは高さ50センチ前後。紀元前6000年のものと見られる。発酵用か保存用かは不明だが、当時は白ブドウも黒ブドウも破砕して、果肉、果皮、種子、果梗とともに、クヴェヴリに入れて発酵させていた。発酵が終わると、さらに果皮とスキンコンタクトし、ある程度たったところで、果肉、果皮、種子、果梗を取り出し、別のクヴェブリに保存して、飲んだ。
 博物館には、クヴェブリからワインをすくうためのカボチャを半分に割って作ったひしゃくや、ブドウを足でつぶすための台などが保存され、クヴェヴリを造る風景のパネルも展示されている。クヴェヴリを使う原始的なワイン造りは、2013年にユネスコの世界無形文化遺産に登録されたことで、世界的に知られるようになった。
ただ、それ以前に、イタリアのヨスコ・グラヴナーをはじめとする自然派の生産者は、クヴェブリでスキンコンタクト長めに行う手法で白ワインを造り始めた。フェノールを多めに含み、色調の濃いそれらの白ワインが「オレンジワイン」として、ブームになったことから、クヴェヴリを使うワイン造りは、フランスやイタリアにも静かに広がってきた。今では、カリフォルニアなど新世界にも実験的にクヴェヴリを導入する生産者が増えている。
 国家ワイン局によると、ジョージアは土着品種の宝庫で、525種のブドウ品種が存在すると言われる。よく使われているのは30種前後。国際品種は全体の3、4%にとどまる。栽培面積は5万ヘクタールで、生産量は8000万から1億2000万リットルリットルで、輸出の割合は25%以下。自家用ワインの生産と販売に規制はなく、自宅でクヴェヴリでワインを仕込む市民も多い。1人当たりの消費量は20リットルと多い。
 グルジア政府の農務省はワイン文化の振興に力を入れる方針で、香港はデブラ・マイバーグ、米国はリサ・グラニック、英国はサラ・アボットというMWをアンバサダーに指名している。日本のアンバサダーに指名された大橋MWは「日本にはジョージアのワインの情報がほとんどない。ワイン文化を洗練させるため、本当は知らなければならない情報を広く、深く伝えるのがMWとしての私の使命」と話している。

ブドウを茎ごと足で踏みつぶし、もろみがクヴェヴリに流れ込んだ
紀元前6000年前に使われていたクヴェヴリ
ワインをすくうためカボチャの皮で造ったひしゃく
クヴェブリの内部を洗うためのチェリーの木の樹皮で造った道具
1960年代のクヴェヴリの製造風景
ワイン造りはジョージアからギリシャやエジプトに伝わり、イタリア南部、フランスへと広がった

購読申込のご案内はこちら

会員登録(有料)されると会員様だけの記事が購読ができます。
世界の旬なワイン情報が集まっているので情報収集の時間も短縮できます!

Enjoy Wine Report!! 詳しくはこちら

TOP