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家族で伝統技を継承、数少ないクヴェヴリ職人を訪問

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 8000年以上の歴史を誇るジョージアのクヴェヴリ。昔はどの村にも1軒はクヴェヴリ造りの職人がいたが、現在は国内に8軒程度しかないという。カヘティ地方には2軒のみ。バーディスバニ村で4世代続くクビラシュヴィリ家の工房を訪ねた。カヘティ地方で最大の都市テラヴィから15分程度の村にある。外から見るとただの一軒家である。
 レニーとザザの父子が、年間に40個程度を製造している。1個を仕上げるのに2か月かかる。2000リットルの標準的なサイズで400ドル。手間暇を考えると、高いとはいえない。手造りのため、大量生産は無理。西部のイメレティ地方にも職人がいるが、全土で年間に生産される数は多くないという。
 素材は粘土。国土の中央部分に横たわるゴンボリ山脈のシュワンタという山の森からもってくる。小石などを取り除いて、逆三角形になっている底の部分をまず造る。そこから少しずつ上に粘土を積み重ねて、壁を造り上げる。2000リットルのクヴェヴリは高さ3メートル近い。厚みは3、4センチ。厚い方が質は上がるが、焼くのに時間がかかるから、この厚さが適当なのだという。
 「いい粘土は見ただけけでわかる。冬は温度が下がり、雨が降って湿度が高まるから造れない。3月から9月までに造る」とザザ。
 彼が粘土のかたまりをバターのようにヘラで切って、素早く脚の形を造っていく様はさすがの職人技。流れるように美しく、無駄がなかった。
 工房には5分の1程度まで練り上げたクヴェヴリが10個以上あった。作業は並行して行う。根気と正確さが求められる。まとまった個数が完成すると、高さ3メートルはある小屋のような窯に入れて、レンガで密閉する。すき間からブナやシデなど燃料となる木を入れて燃やす。1000-1200度程度に保ち、約1週間、焼き続ける。
 冷めたら、外に出して、余熱があるうちに内部に蜜蝋を塗る。蜜蝋は浸み込んで、ワインの浸透を防ぐワックスの役割を果たす。外側をセメントで固めて、強度を増して出荷する場合もある。自然派の生産者は「ワインが呼吸できない」と嫌うので、そのままの形で出荷する。クヴェヴリの大きな利点が微妙な酸化にあるから、これは当然の話である。
 クヴェヴリの設置には手間がかかる。多くの生産者はバクテリアが繁殖しないように、サルツヒと呼ばれるチェリーの樹皮で造ったブラシなどで内部をよく清掃して、長年使い続ける。クヴェヴリはかつて、地上に設置していたが、紀元前2000年ごろに起きた地震で倒壊してから、地中に埋めるようになった。ほかの生産者では、1900年代に使っていたことを示す年号を刻んだクヴェヴリも見た。
 「古いクヴェヴリでも、きちんと手入れしていれば、新しいものと同じくらい、完ぺきな醸造ができる」とザザ。
 クビラシュヴィリ家には、米国、イタリア、アゼルバイジャンなど外国からの注文も多い。生産者の名前を聞いたら、一々覚えていないという返事だった。トビリシの大学を出たザザは、将来は息子に仕事を引き継ぐ予定だ。家族で職人技を継承していくのだ。クヴェヴリの口には、クビラシュヴィリ家の作成を示すサインが刻んである。
  「9歳か10歳のころから、クヴェヴリ造りを手伝ってきた。家族の伝統を守り、ジョージアのスピリットを伝える仕事に誇りを持っている」と、ザザは誇らしげに語った。
底部から素早く練り上げる
いい粘土はきめ細かく、弾力がしなやか
10個以上を並行して組み上げる
高さ3メートル以上の窯で焼く
ブナやシデを薪にする
ザザ(左)とレニー父子

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