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朝一番でル・パンを訪ねたら、ジャック・ティエンポンがいなかった。とまどった。なぜいないのか。彼の穏やかな笑顔に迎えられるといつもほっとするのに。
2本しか試飲アイテムのないル・パンの持ち時間は20分。昨年は渋滞で15分遅れて小走りで駆け込んだ。彼は微笑みながら開口一番、
「あわてないで。深呼吸して」
気持ちが楽になって、グラスに集中できた。
ポムロールはブルゴーニュに似ている。のんびりしている。小さな村のだれもが顔見知りだ。今回は余裕をもって着いたので、ル・パンの畑を歩いていたら、2頭のゴールデン・レトリバーが散歩していた。
ドメーヌで迎えてくれたのは、チーフ・ワインメーカー兼エステート・マネジャーに昇進したダイアナ・ベルーエ・ガルシアとマネージング・ディレクターのヴィアニー・グラヴロー。
グラヴローはオルネッライアとマッセートの販売・マーケティング責任者を務めたフランス人。経営や財政を担当する。フィリポナやサロン・ドゥラモットなどプレミアム・ブランドで要職を務めたやりてだ。
ジャック・ティエンポンが引退モードに
ジャックがマダム・ルーバから購入した1haのメルローの畑からル・パンを始めたのが1979年。ドメーヌ・ジャック・ティエンポンを設立し、2010年にサンテミリオンでリフを始め、2015年にはコート・ド・カスティヨンでレートルを始めた。
ジャックは妻のフィオナ・モリソンMW、息子のジョルジュ、ウィリアムとと共にベルギー出身のティエンポン家を率いてきたが、80歳に近くなり、日々の経営から身を引くモードに入っている。
2025年のポムロールは5月から8月まで雨がほとんど降らず雨量は40ミリだった。ブドウは小粒で、平均収量はポムロールが25.5hl/ha、サンテミリオンが34.7hl/haだった。リフは粘土石灰岩質のプラトー(台地)とスロープ(斜面)から生まれ、コンクリートとステンレス・ヴァットで醸造される。
「リフ 2025」(L'IF 2025)はメルロー75%、カベルネ・フラン25%。ダークチェリー、ブラッドオレンジ、アイリス、程よく凝縮していて、心地よいグリップ。酸味が高く(pH3.28)、多めのカベルネ・フランのもたらす活力がある。石灰岩質からくる塩気を帯びた余韻が長い。9月11日のメルローから収穫を始めた。新樽50%。アルコール度は13.6%。94点。
「ル・パン 2025」(Le Pin 2025)はブラックチェリー、プラム、砕いた石、コーヒー、上質なタンニン、噛めるような果実味、2024年に比べると、凝縮感と重量感のあるフルボディ。サテンのテクスチャー、クラス・ド・フェール(酸化鉄を含む粘土土壌)が生むミネラル感、エキゾチックでエネルギーがあふれている。小粒だったため20hl/haの低収量だった。9月5日と10日の2回にわけて収穫された。65%新樽。26度の低めの温度で発酵したがアルコール度は14%。96点。
ル・パンが1haの畑を追加
ル・パンはヴュー・シャトー・セルタンに隣接する1haから始めたが、4月に入ってサンテミリオンとの境界に位置するレヴァンジルから1haの畑を購入した。カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンも栽培されている。畑が追加されてどう変わるか。注目される。
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